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000131

ボクの町

 僕の住む街は岩見沢といいます。いわみざわと読みます。なんか由来があるそうですが社会の時間に少し習っただけなので余り覚えていません。湯を浴びるだか、そんな意味だったかも知れませんが、それも確かではありません。人口は約8万5千人くらいで、徐々に減っています。もはや名ばかりの駅前商店街は半数が営業していません。週末の夜は駅前商店街の外れが市内ナンパスポットになります。ダサく改悪された車が数台止まったり走ったりしています。

 岩見沢には何もありません。何もないというのはよそに誇るものが何もないという意味です。あるものといえば、市長が乱心で作ったモニュメントという名の粗大(高さ1メートル〜5メートル)なゴミ数個だけです。頭が変なのでしょう。あと、公園という名の広大な空き地もゴロゴロあります。そんなこんなで市の財政はピンチです。新聞に載るくらい。

 雪は捨てるほどあります。札幌雪祭りの雪のいくらかは岩見沢の雪だったりします。
 そんな豪雪地帯の名に恥じない、雪を巡っての住人・役所の争い。隣家の屋根の落雪にキレたジジイが、ツルハシで奥さんを殴る殴る。

 でも住んでる人はいい人ばかりです。皆、中途半端な都会志向・無自覚なダサさで、確固たるスタイルを作り上げています。
 小さなムラ社会で必死に蠢いて、なんとか自分の存在を確かめようとする若者と、諦めきった中年水商売女性の対比は泣けます。そんな夜の繁華街は滑稽ですらあります。岩見沢のキャバクラはちょっと違う、という事実。

 僕はそんな街に骨を埋めようとしているわけで、やっぱり駄目だ、逃げよう、と考えるわけです。これがボクの町。ボクが踏まれた町。




000128

水道管凍結注意を告げるテレビCM、部屋の真ん中にストーブ、ヤカンは沸騰してポコポコ、足元に犬が丸まって寝てる。世界中がずっとこのままだといい、って思うくらい平和だ。僕はチャンチャンコなんか着て読書。

『みなさん今夜は静かです
 薬缶の音がしています
 僕は女を想っている
 僕には女がないのです』

中原中也の「冬の夜」 僕はこの詩が好きなのだ。スピーカーからは、くるりの『東京』が流れている。甘い香りのホットココアを一口すする。

『それで苦労もないのです
 えもいはれない弾力の
 空気のやうな空想に
 女を描いてみてゐるのです』

平和を乱す1本の電話。
トゥルルルル、ガチャ。もしもし山田です。
「山田か。俺だ、稲垣だ」
おー稲垣か、久しぶりだなー。卒業式以来だから4年ぶりか。どした?
「お前なら信じてもらえると思ってな。対馬も森も、もう駄目だ」
あ?何?そういえば、おばさん心配してたぞ。一回も連絡してないんだろ。今どこにいんの?
「家には帰らない。場所も教えられない。特別警察に監視されてる」
何だよ特別警察って。つーかそんなのないけど。
「証拠はあるぞ。ダウンタウンの松本がボウズにしただろう。あれは俺のマネだ」
ありゃ。もしかしてお前、発狂
「クソッ盗聴されてる。切るぞ」
ガチャリ、ツー・ツー・ツー

かくて夜は更け夜は深まって。




000126

 中学生の頃、クラスに番長がいました。といっても、番長などという、もはや記号化された言葉で呼ばれているという時点で笑いの対象だから、彼の、クラスにおける地位みたいのは分かってもらえると思います。そう、勘違い野郎です。弱い者には強かったりします。でも番長より強い者(クラスのほとんど)は番長をイジります。番長はそれを人気のバロメータと受け取ります。

 番長の家はとても貧しくて、それは両親ともにパチプロだからなんです。調子の良いときはソコソコの暮らしなんですが、両親はどうもパチプロの才能が無いらしく、しょっちゅう金に困っていました。

 金が無いという環境が番長をアホにしたのか元々アホだったのかは分かりませんが、とにかく番長は頭が悪いんです。
 番長は自分をヤンキーだと思っているので服装に気を使います。中学生にとって重要なのはボンタンですね。
 その当時一部で流行していたのは、フトモモ部分が異常に膨らんでいて、スソの部分は足が通らないんじゃないかっていうくらい細いボンタンなんですが、番長はそれが欲しい。でも貧乏。
 「じゃあ作れば良い」ということなんでしょうか、番長はどっかから持ってきた“土管”という形状のズボン、それのスソを自分で細くして、でも糸で縫うとかは出来ないので安全ピンで留めて、上は標準の学生服という服装で学校に来るようになりました。形が明らかにヘン。でも自信満々。それをみんなで嘲笑するんです。番長はホクホク顔。誉められてると思ってるんでしょう。
 そうやって日々は流れて行きました。

 そんな中学生活最大のイベントといえば修学旅行。みんな躁状態です。でも番長の顔は曇りっぱなし。金が無いんでしょう。でも番長はプライドが高いから言いません。どうなるんでしょうか。

 番長は参加することができました。でも番長の顔は晴れません。それもそのはず。みんな知っているのです。番長の秘密を。

 修学旅行用に金を積み立てるようなこともしないバカ親は、パチンコで勝った金でどうにかする予定だったのでしょう。でも、番長の両親はその日も負けました。
 で、両親のとった行動は。「校長に泣きつく」でした。校長宅に押しかけ、土下座を繰り返し、借用書を書き、やっとのことで一万円札数枚を借りたんです。
 その話は何故かアっという間に広まりました。番長、プライドがズタズタ。

 それまで根拠の無い自信に満ち溢れていた番長、この一件以来すっかり影が薄くなってしまいました。虚勢を張らない番長をイジッても面白くありません。教室に番長の居場所は無くなってました。

 卒業を控えた2月、番長が学校を休みました。次の日も、その次の日も学校に来ません。番長のいない学校は、しかしいつもと変わりませんでした。受験だとか恋愛だとかで忙しい僕らは、誰も番長のことなんか気にしません。番長はとうとう学校に来ませんでした。

 卒業式にも番長は来ませんでした。式が終わった後、担任が番長の家庭に起こったことについて教えてくれました。なんでも、パチプロではどうにもならなくなった両親は生活のためにサラ金に手を出し、返す当てなどないものだから別のサラ金に・・・という雪だるま式借金で首が回らなくなり、北海道の某馬産地へ夜逃げしたということです。

 番長、芸が無いよ。そんなのありがちじゃないか。



現在、番長は梁山泊として活躍しています、というオチはないです。




000121

今日、僕にとって最後の講義がある予定だったのだが、突然休講となり、実にあっけない大学生活の幕切れとなってしまった。
雪が溶ければ皆離れ離れになってしまう。その寂しさを紛らわすためか、僕らは学食で4時間近くバカ話に興じていた。その内容の低俗さたるや前田忠明レベル。

僕は、大学生活4年間の目標として『ガサツになる』というのを掲げていたので、今日のような近くに女の人がいる状況で「だからー、ラブマシーンっていうのはバイブのことでしょ!」とか平気で言えるというのは、人間的に成長したということなのだろう。




000120

気になってしょうがない映画があるんですがね。どうしても映画館で観たいんですよ。「なら観ればいいじゃん」って事なんですが、そう簡単にはいかない。

あ、学生1枚
「はい。どの映画ですか?」
えーと、はじめてのおつかい・・・
「はい?」
ロッタちゃんはじめてのおつ・・・下さい。
「なんですかっ?」
『ロッタちゃん、はじめてのおつかい』の学生1枚下さい!
「はい、1500円ですプププ(嘲笑)」

券を買うにはこのような屈辱的なやりとりをしなくてはいけないのです。無頼派学生の私としては耐えられそうにない。赤面・汗ダクです。窓口の人達が私の悪口を言って笑っているという被害妄想も手伝って、映画を楽しむどころではありません。内容的に、男友達と行くとツラさ倍増だし。

というわけで、僕と一緒に『ロッタちゃん、はじめてのおつかい』を観に行ってくれる札幌近辺在住のステキ女子がいましたらメール下さい。当方体重190キロで膝を壊しリハビリ中の力士。好きな食べ物は脂肉とパスタ。




000111〜14

 通学の電車で、俺の隣に3〜4才くらいの子供を連れた女性が座った。
 子供は座るなり「のど乾いた!」 母親が「電車にトイレないからね。それでも大丈夫?」と聞くと子供は「うん!」と良い返事。
 コーンスープを買い与えると子供は汚い音をたててアッという間に飲み干し、「オシッコ!」
 俺は冷汗をかいていた。


 祖母が崩御し葬儀に参列。出棺の時になると皆、目から水を流している。これが涙というやつか。僕はその時「ホーキンスの革靴は、さすがに歩きやすい」と思った。
 しかし祖母がハマっていたのが新興宗教もどきだったとは。老狂人達の一糸乱れぬパフォーマンスとお供に、親戚縁者及び町内会の人唖然。僕トランス状態。赤ちゃんパニック。


 日本列島女子高生の旅。地方の女子高生の清純さや素朴さを前面に押し出す番組作りは、東京のコギャルは全員汚らしい顔であるかのように事実を歪ませて偏った情報を垂れ流すいくつかの番組と同じ臭いがして、非常に鼻につく。
 女子高生たちはキラキラと輝き生命力に溢れ、僕は目を細めてその光景を見つめる。あんなに若々しいハツラツとした彼女たちも、そのうち別れ別れになり、年をとり、適当な男と結婚して主婦になっていく。結婚したり流産したりフェラチオとかもおぼえて・・・


 今日、僕の前を異常に肩幅の広い女が歩いていた。その女のふくらはぎが四角くて太かったため、「あなたはガンダムに似ている」と教えてあげた。それから30分ほど彼女の肉体的欠陥を指摘し続けた。という妄想をしながら街の中を歩いた。


 姉が宮城へ行ったお土産に小さなこけしを買ってきた。大きさがちょうど良かったので携帯ストラップにした。その時は自分のセンスに自信満々だったが、しばらくすると少し違うような気がしてきた。今朝見たら死にたくなった。


 友だちが内定を貰ったといって喜んでいた。僕達も共に喜んだが、そこにいた全員が内心では彼が過疎地へ配属にされればいいと思っていた。誰もが心から祝福しているように見えた。


 久しぶりに登校。札幌の街に寄ろうとしたが、人酔いしそうなので中止。雪道を厚底靴で闊歩するバカ多数で暗澹とした気分。死にやがれ東京文化崇拝の無脳症女ども。
 病的に肥満した男がダウンジャケットを着て前方を歩いていた。ブクブクの姿を見ていると吐き気をもよおした。こんな奴のために羽をむしりとられた水鳥の気持ちを考えると、殺意を覚える前に自分が死にたくなる。


 これをテクノストレスというのだろうか。ディスプレイを見ると眼球が破裂しそうだ。頭の上のほうが痛む。常に目のふちがピクピクする。もうパソコンにさわりたくない。でもさわりたい。嗚呼。


 帰りの地下鉄の中で小噺をするキチガイがいた。うるさいのでキチガイの持っていたCDを奪い取って窓から投げ飛ばしたら静かになった。何故か乗客がこちらを見ている気がする。自意識過剰だろうか。本屋で『さくらの唄』を万引き。


 某スポーツ店の裏でタバコを吸っている店員がいた。どうやらニコチン中毒のようだ。コソコソと喫煙している様子はとても無様であるが、中毒であるから外見など気にしている余裕は無いのであろう。健全な精神が宿るといわれるスポーツだが、用品を売る店員がこれではスポーツ選手の強姦事件が起こるのも不思議ではない。とりあえず日本政府はマリファナを合法にすべきだ。




000107

幼少の頃に経験した強烈な出来事は鮮明に記憶され、後の自分に大きな影響を与えるものです。

中学の時同じクラスだった坪井さんは、小学二年の時、どこかの病院の診療室に置かれた冷凍庫の中に保管されていた男性器を見て以来、先端恐怖症になったそうです。

大学の友人の村松君は、幼い頃タラバガニをめぐっての母と兄との壮絶なケンカを目撃してからというもの、カニばかりか、イカ、タコ、ホタテ、更にはかっぱえびせんまで、魚介類を口にするとジンマシンが出るんだと話してくれました。

今は職に就かずブラブラしている近所の今井君は、小学一年の時、隣の席の女子の頭をハサミで切りつけた時の快感が忘れられず医師を目指していましたが、その事件が原因で男色家にもなってしまったそうで、それを生かした仕事をしようとも考えているそうです。夢が叶うと良いですね。

小学四年の冬、下校しようとした僕は、全面ガラス張りの生徒玄関のドアが開いているか閉じているか確認せずに走り込んでいきました。ドアは閉じていたようです。僕は手首と膝を血まみれにして座り込んでいました。痛みはありませんでした。白い雪と赤い血のコントラストが綺麗でした。一緒にいた友人達が僕を囲んで呆然と立ちすくんでいました。血は止まりませんでした。
車窓から全面プラスティック張りになった生徒玄関を見るたびに思い出す、ほろ苦な思い出。献血車の中で血を抜く前に貧血になる僕は、今後も献血はできないようです。




000104

昨年の大晦日は、ミレニアム婚を控えた姉の彼氏を家に招いてのホームパーティー。そんなこと急に言われても、僕の中で義兄といえば『生ゴムフェチでいくぢなしでアンテナ売りで一生を終える』というイメージしか無いわけで、一体どのように会話すればいいか分からず嫌な汗。カウントダウンは一人部屋に戻ってヒッソリと。
1日は初日の出を見にイタンキ浜。吹き荒ぶ風と寄せては返す波が良い感じの海を一人見つめ、胸には新たな決意。という場面でブサイクなカップルが日の出をバックに写真を撮れなどとぬかしやがる。シャッターきるフリして写真撮ってやらないのは当然のことです。現像して驚け。バカめ。バカどもめ。

ミレニアムのカウントダウン。歴史的な瞬間。しかしその程度では物足りなかったのか、ブラックユーモア好きの祖父母が揃って死へのカウントダウンなんて始めちゃいまして、この慌しさ。元日からクモ膜下出血とはなんたる笑いのセンス。
そんな折、僕もスノーボード中にプッチ雪山遭難。コース外の腰まである深雪をかき分けさまよい歩くと、みるみる体力が奪われていくのが分かって「あ、死ぬかも」って思っちゃったりした正月三が日。




000103

今年の初夢は、エンクミに性の手ほどきを受けるというものでした。一体この気持ちをどうすればいいのだろうか。






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